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環境問題と技術コンサル

環境問題と技術コンサルをお読みいただきありがとうございます。

 

ご意見などはブログコメント欄、もしくは

春山(haruyama@hauyama-ce.com)までよろしくお願いいたします。

皆さんこんばんは。

新しいテーマに

「環境問題と技術コンサル」を挙げたいと思います。

環境問題と言ってもエネルギー問題、ゴミ問題、マイクロプラスチック、食料、水、汚染物質、

いろいろありますが、あえて絞らず皆さんの専門と環境問題についてご意見お聞かせください。

まずは問題提起、○○の業界では××の問題がある。というところまででも大丈夫です。

よろしくお願いします。


[鈴木]

化学部門から

わかりやすいところでリチウムイオン電池

現在リチウムイオン電池の世界市場は6兆円規模です。

その中でシェア拡大しているのが電動車(飛ぶものも含む)です。

 

リチウムイオン電池は何がスゴいかというと、

軽い、小さい、自己放電少ない、大容量、長寿命、高電圧、低温使用可・・・

ノーベル賞取るくらいですから今までの電池とは内部の仕組みも含め、比べものならない優れたものです。

 

ところが課題があります。それは環境問題と人権問題。

 

リチウムイオン電池のプラス極はレアアースのコバルトを含むコバルト酸リチウムという物質を使います。

リチウムイオン電池を作るときのコスト内訳はプラス極物質がコストの1/4を占めます。

簡単に言うとコバルトがレアなので高いと言うことです。

コバルトの原産国はと言うとコンゴ共和国。アフリカの真ん中です。

世界のコバルトの生産量の約60%をコンゴ共和国が占めます。

第2位以降はオーストラリア、ロシア、カナダと続くのですが、

それぞれわずか5%程度ですからでいかにコンゴ共和国に一極集中しているかがわかります。

 

コンゴ共和国は資源は豊富な国ですがアフリカ最悪の独立国家と言われるほど紛争が絶えない国家です。

国民は1人あたりのGDPは400ドル(日本は16000-32000ドル)というデータが裏付けしています。

そのコンゴ共和国の貧困な国民が採掘したコバルトを我々は使用しています。

コンゴ共和国がこけたらリチウムイオン市場は皆こけます。

 

環境問題の解決にはなりませんが、我が国もコバルト資源大国になりうる可能性があります。

それは海洋資源。日本の排他的経済市域にはコバルトリッチクラストと言われる海底資源があります。

現在は海底環境モニタリング機器も充実していますから国際ルールに則った形での採掘ができると期待できます。

[春山]

鈴木さん

ありがとうございます。

いわゆる紛争鉱物問題ですね。最近はCSR調達の自社ガイドラインを

オープンにしているメーカー多いですよね。

 

独BMWはコンゴからのコバルト調達は停止すると言っています。

 

日本は国は安定していても超高齢化社会というリスクがありますからね。

日本は外貨を稼ぐためには製造業による輸出か観光業によるインバウンド需要が大切ですが、数年後は日系企業も含む世界中のメーカーから日本の製造業は敬遠されるときが来るかもしれませんね。

 

リチウム電池というものはコバルト必須ですか?

 

代替材料やあるいは全く新たな電池の量産化の目処などはどうなんでしょうか?


[鈴木]

代替物質の分野もものすごく研究が盛んです。

そうはいってもコバルト酸リチウムが安全に作れて安いんですよね。

化学と環境問題は表裏の関係ですのでまた投稿します。


[***]

製造技術の観点からすると、

加工時に使用する鉱物油の排出を低減することにより環境負荷物質の低減が可能です。

 

しかしながら、一口に鉱物油といっても切削加工時の切削油や、

機械の潤滑油、型彫放電加工の加工油とそれぞれ使用目的も異なれば、

その目的に応じた組成も異なります。

 

例えば、切削油であれば、加工部位の冷却や切削屑の除去等を目的とし、

潤滑油であれば、摩擦面間の潤滑能力の維持、焼付等の表面損傷の防止を目的とし、

放電加工の加工油であれば、放電加工時に発生する加工屑の除去、

放電加工の安定放電に必要な絶縁性の維持を目的とします。

 

これらの鉱物油は、自然酸化や使用により金属粉等の混入により酸化劣化するため、

そのまま使用を継続すると機器トラブルや加工性の低下を引き起こすことから

定期的に交換しているのが現状です。

 

鉱物油の交換頻度を低減するには、フィルターを使用して濾過浄化することで

ある程度の再利用を行うことが行われています。

 

しかしながら、フィルターでは目詰まりの問題や数μmサイズの

酸化生成物(スラッジ)を完全には除去できない等の問題があります。

 

これらの問題の解決策の一つとしては、

電気泳動または誘電泳動を利用した静電浄油装置を使用することが挙げられます。

 

静電浄油装置を使用することで、酸化生成物を除去し、

鉱物油の清浄度を高めることができますが、

コスト面から普及が進んでいないのが現状です。

 

静電浄油装置の普及を進めることで、鉱物油の再利用の頻度を高めることができ、

ひいては鉱物油の排出量を低減でき、環境負荷の低減を行えます。

 

今後、環境負荷低減のための静電浄油装置の導入のための

補助金等の支援策が必要になると考えます。

[春山]

***さん

油ですか!

確かに加工で大量に使いますね。

製造業向けの補助金にもいくつか種類があるようですが、

浄油装置というものを導入に当たって申請できそうなものって何かありそうですか?


[***]

補助金等については、

ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金や各都道府県や

東京23区の各区が行っている環境対策の一環としての

環境保全資金や公害防止設備資金の融資等があります。

***さんへ

 

浄油装置の導入という点でいま現在ある補助金は

難しいですか?

 

例えば現状の補助金は難しくとも導入によりメンテナンスフリー

になりコストメリットが出る、といった利点はありそうですか?

 

補助金もなくコストメリットもあまりないとなったら

大規模な普及は現状では難しそうですが、

 

環境の視点では絶対にメリットあるから普及が進めば良いですよね!


[***]

補助金については、明確にどれだけ省エネを図れるかを基準にするものが多く、

製造業だとどちらかというと工作機械の導入に重きが置かれています。

 

静電浄油装置の様に直接生産や製造に関わらない機械の場合、

補助金対象から外れている場合もあります。

 

静電浄油装置の場合は融資等になることが多いです。

 

では、導入のメリットがないかというとあります。

例えば、型彫放電加工機の場合、加工槽に油を満たして加工するので、

大体30~40Lの油を使用します。

 

油を加工槽とタンクの間で循環させています。

この循環の際にフィルターで濾過しているのですが、

酸化生成物(スラッジ)まで除去できないため、放電加工機の使用頻度によりますが、

年間1~数回の油の交換が必要となります。

 

静電浄油装置を使用すれば、この交換頻度を低減することができ、

環境負荷物質の排出を低減できるだけでなく、油の廃棄処分費用も低減できます。

 

さらに、油の清浄度を維持できるため、加工精度の低下も抑制できます。

この辺を明確にできれば、普及も進むのでしょうが、

工作機械の更新の方に設備投資の多くが振り向けられており、

補助機材である静電浄油装置まで予算が回らないのが現状です。


[坂東]

情報工学部門の観点から言うと「環境」は意外と論じにくいテーマですが、

一応、話せそうなことだけでも・・・

 

最近は、IT系でもISO14000認証を取得する企業が出てきています。

 

https://www.fsi.co.jp/company/iso/iso_14001.html

https://www.nttpc.co.jp/company/effort/enviroment.html

https://www.itckk.co.jp/company_info/management_system/iso14001.html

 

こういう企業は、大概、以下の内容で環境保護をアピールしているはずです。

 

・エコロジーに関係しそうなITシステムの開発

・グリーン購買 (環境に優しいモノを仕入れる)

・ペーパレス化

 

お分かりの通り、ソフトウェア開発自体が有害物質を撒き散らすということはありません。

ソフトウェア開発という行為そのものの環境負荷が原理的に小さいため、

他のハードウェア製造業系よりは「環境」に注視しにくい業界と言えます。

 

とは言うものの・・・

 

実は、ITが環境に影響を及ぼす大問題があります。

それは「電力消費」です。

巨大IT企業が有する「データセンター」には膨大な数の

「サーバー」「ストレージ」「ネットワーク機器」が稼働しています。

それらの機器の消費電力は莫大です。

 

クラウドコンピューティングの普及が決定打になってしまっています。

そこで、最大手のAmazonやGoogleは下記の通り「環境に配慮している」というアピールしています。

 

https://news.mynavi.jp/article/20110909-a074/

https://aws.amazon.com/jp/about-aws/sustainability/

 

更に追い打ちを掛けるのは、ビットコイン採掘です。

ビットコイン採掘場のために「発電所」を探している有様です。

 

https://www.coindeskjapan.com/19095/

 

ITで扱うコンピューターが事実上「電子計算機」である以上、電力消費は頭痛の種です。

IoTを扱っている私も消費電力絡みの問題には四苦八苦しています。

恐らく、電子回路の省電力化やアルゴリズムの最適化により、ある程度はマシになるのでしょうが、

抜本的なイノベーションが起きない限りは、「ITが電力消費の元凶」となり続けることでしょう。

 

それから

「エナジー・ハーベスティング」は注目かも知れません。

https://eetimes.jp/ee/articles/1801/25/news016.html

 

 

「EnOcean」はエナジーハーベスティングをつかって、電力消費無しで無線通信をする技術です。

 

https://www.enocean.com/jp/

坂東さんへ

 

坂東さんへ

ありがとうございます。

エナジーハーベスティング!

初耳です。電力消費なしで無線通信って凄くないですか!

もう少し詳しく、どのような技術でどのようなところで使われているか?

など教えていただけると嬉しいです。


[坂東]

「エナジーハーベスティング」は、今までは見捨てていた微細な自然エネルギーに着目しています。

例えば、自然環境には運動(振動)、温度や気圧の差、光などのエネルギーがあったのですが、

今までは有効活用されてこなかったです。

 

このようなエネルギーは微細なので捨て置かれた訳ですが、

IoTデバイスのような省電力機器の場合は、

その微細なエネルギーすら使い倒したいという切実なニーズがあります。

 

IoTの「エナジーハーベスティング」の活用事例として、「EnOcean」という無線技術が有名です。

 

要するに、無線通信くらいの電力消費ならば、「エナジーハーベスティング」で

何とかカバーできるだろうという発想です。

https://www.enocean.com/jp/technology/energy-harvesting/

 

「エナジーハーベスティング」は本格普及しておらず、まだまだ実証実験レベルです。

東京駅など人通りが多い雑踏に人が踏むと発電できるシートを敷いたり、

フィットネスクラブのバイクで発電できるようにしたり、

「無駄に捨てられてきたエネルギーをすくい上げる」仕組みが研究されています。

それから、門外漢の考えも・・・

 

日本は火山国なので太陽光、風力、バイオマス、潮力よりも

「地熱」発電が本命のように思います。

とは言え、国立公園の自然保護や温泉地の反対にあって難しいそうですね。

水力発電も小型の水車を使えないものかとも思えます。

坂東さん

なるほど。

人が踏むと発電するシートというのは圧電効果を利用していますね。

設備の振動を電気信号に変換してモニターし、予防保全に利用する

ピエゾボルトというものがありますが、それと同じですね。

振動エネルギーを電気エネルギーへと変換する。

温度差を変換するペルチェ素子とかもありますね。

いわゆる熱電対。

 

これらはどうしても発電量が不安定になりますが、

こういった微弱発電を効率的に蓄放電できるようになると

電源不要のセンシングが可能となりまた世の中変わりそうですね。

 

地熱は火山国なら可能性高いですよね。

草津なんか町中で温泉沸いてますし。

 

でも私は自然エネルギーの大規模利用には

慎重になったほうがいいと考えています。

 

本来そこにあった熱、光、風などのエネルギーを電気エネルギーとして

取り出すわけです。

つまりエネルギーのバランスを崩すわけですから。

長期的に見て何かしらの影響が無いと言い切れないでしょう。



[田口]

■海洋プラスチックごみ問題と製品設計

環境問題に関わるプラスチックのトピックスはたくさんありますが、

昨今注目されている海洋プラスチックごみ問題について考えてみます。

 

海洋プラスチックごみ問題の解決策の一つが、生分解性プラスチックです。

生分解性プラスチックは微生物の力で分解されるプラスチックのことです。

 

※混同しやすいですが、生分解性プラスチックが植物由来であるとは限りません。

 

製品設計の立場では、分解(劣化)というのは非常にやっかいな現象です。

分解(劣化)が進む過程で機械的特性が徐々に低下していくからです。

 

熱(常温でも)、酸素、紫外線、水分など身の回りに普通に存在する要因によって

少しずつ分解(劣化)していきます。

 

例えば、家電でよく使用されるABSという材料は、60℃の環境下において、

10万時間(約11.4年)で強度が半分程度になります。

 

また、強度低下とともに材料の柔軟性がなくなり、

ちょっとした衝撃で割れやすくなります。

 

温度が高い場所や熱機器などに使用する場合は、

その特性変化を見込んだ設計が不可欠なのです。

 

しかし、プラスチック製品の設計で一番難しいのが、

この分解(劣化)をどう設計に反映させるかです。

 

数ヶ月から数年単位で分解(劣化)は進んでいきますので、

短期間で長期間の特性変化を評価する加速試験が必要です。

 

また、劣化要因は一つではないことが多いので、複数の要因の影響も評価しなければなりません。

 

これらは大変な手間がかかり、精度良く評価することが難しいのです。

 

私の知っている限り、かなりの割合の企業が分解(劣化)の評価を行っていません。

そのための知識や設備を持っていないのです。

プラスチック製品の不具合の大きな要因となっていますし、

私自身のこの分解(劣化)が原因の製品不具合を何度も経験しています。

 

生分解性プラスチックを使用するにあたっては、

熱や紫外線といった分解(劣化)の評価に加え、

生分解性の評価をどう設計に落とし込んでいくかというのが大きな課題になると考えています。

[春山]

田口さん

海洋プラスチック問題!出ましたね。

ここ数年、かなりホットな話題です。

 

基本的なことを確認させてください。

 

ABSは60℃の環境下に置いて10万時間で劣化、強度半減とのことですが、

生分解性プラスチックはこのような環境下でこれくらいの劣化(分解)が

なされますという指標のようなものってありますでしょうか?

 

私のような素人考えでは土に埋めたら分解するのかなとなっちゃいます。


[田口]

生分解性能に関しては規定があります。

JIS等で定められた一定の条件下において

「○○日以内に○○%以上分解すること」というような規定です。

 

しかし、通常使用の条件における指標は、

強度設計に使えるレベルのものは準備されていません。

(これは一般のプラスチックも同じです)

 

代表的な生分解性プラスチックであるPLA(ポリ乳酸)の分解機構を例に考えてみます。

PLAは周囲の水分により加水分解が起こり、分子が小さく切断されます。

小さく切断された分子を微生物が食べることにより、最終的に水と二酸化炭素に分解されます。

 

実は加水分解というのはプラスチックの劣化の一形態です。

室内環境でも徐々に進んでいきますが、高温高湿の方が促進されるため、

土に埋めると分解が早く進みます。

 

以前、キッチン家具で使用されたプラスチック部品が加水分解により劣化し、

大手企業の製品がリコールになったこともあります。

 

この加水分解を抑制するような材料設計にすると、生分解に長い時間がかかります。

一方、生分解性を高めようとすると、

材料の劣化が製品使用中や在庫中に起きる可能性があります。

 

このあたりのバランスをうまく取れるようにならないと、

生分解性プラスチックの用途は広げられないでしょう。


[春山]

皆さんばかりで私が何も発言していませんでした。

 

環境問題と生産技術について。

 

なんと言っても自動化の効果は大きいです。

ちなみに前提として自動化=無人化ではないということは

おさえておいてください。

 

調整や段取りを最初に人が行い、

8時間連続無人自動運転を行うラインがあったとします。

 

自動運転中は場合によっては工場全体の照明や空調が不要、

例えばカメラ認識など必要なときに必要なところだけの照明、

とすることができてエネルギー効率を良くすることができます。

 

また、私は日刊工業新聞社さんの業界紙、機械設計4月号から

「失敗しない!自動機設計 虎の巻」の連載をスタートするのですが、

製造工程で失敗しないということは環境負荷の面からも重要なポイントです。

 

失敗して不良となると基本的には廃棄することになりますからね。

ムダです。

 

自動化で機械を導入すると電気、エアー、水などを多く消費するため

環境の面では良くないと思われがちですがそれは大きな間違いです、

ということがお分かりいただけるかと思います。